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筆記具の正しい持ち方(17/05) [2005]

美しく文字を書くためには、まず正しい持ち方が大切です。ただし、絶対的に正しい持ち方が一種類だけあって、それ以外はすべて誤りというわけではありません。下図の 、 、 の持ち方の中で現在我が国で正しいとされている持ち方は です。しかしながら欧米の学校では の持ち方をしていると の持ち方に直すように指導されるという報告を耳にします。私も、欧米の手書きについて興味があるので外国の人をつかまえてはどのような持ち方の教育を受けたかについて問うことにしていますが、やはり同じような答えが返ってきます。 の持ち方、すなわち親指と人差し指と股の間に筆記具の軸を落とし、人差し指が反り返る持ち方は、日本では望ましい持ち方とはされていません。
 なぜ、同じ筆記用具を使うのに日本と欧米とでこんなにも「正しい持ち方」が違うのでしょうか。まず考えられることに、英字は横書きの 字型運動であり、日本の文字は縦書きの 字型運動であるという違いです。しかしながら、日本人も横書きの、しかも英字入りの文章を書き下ろすことの多い昨今、アルファベットと漢字仮名を書きおろす運動上の差異にその根拠を求めることは難しいでしょう。
 日本では永らく、筆で文字を書くことが実用的な場面でも主流でした。えんぴつや万年筆といったいわゆる硬筆は明治以降徐々に浸透してきたもので、その歴史は欧米と比べ格段に浅いものです。こうして原稿を書いている私の持ち方を観察してみると実際 の持ち方になっています。ちなみに小筆を持つ時は の持ち方です。
 こうした筆記具の持ち方について研究している方のお話しを伺うと、日本では毛筆習字の伝統が長いので、それを硬筆の持ち方にあてはめようとして無理が起きているのではないかとのことでした。
 私自身の見解を述べると、本人の書き心地のよさに応じて から の間なら許容として認めても構わないのではと考えています。これは私の経験則ですが、連続性、抑揚、字形等、バランスのよい書字活動をしている人は、おのずとこの から の間の持ち方をしているものです。
 ただし、親指や人差し指の先端で筆記具を支えない のような持ち方はよろしくありません。親指と人差し指の先端には、運動や知覚の神経が集中しており、この活動を伴う書字行為こそが、手書きの成果を最大限に発揮するからです。これでも書けるといって意地を張っておかしな持ち方をしていると永遠に上達しないでしょう。
 筆記具の持ち方のおかしな人が増えているといわれるこのごろです。これからは「正しさの許容」も含めて「筆記具の持ち方」について考え直すことも必要かと思います。


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