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左利きと右利き(16/04) [2004]

桜の美しい季節、入学のシーズンです。海外では九月入学が一般的ですが、日本における桜花舞い乱れる中での入学は、志高く新しい門出を迎えようとする者にとって最高の背景となるに違いありません。
今日は、そんな新入学の児童をもつ父兄からよく訊かれる質問にお答えしようと思います。それは左利きを右利きに矯正すべきか、という問いです。この右利き、左利きについての話を説明するには、今から三百万年前まで遡らなくてはなりません。直立歩行を始めた最古の人類は、カモシカの骨を右手に持ち、ヒヒの左側を殴りつけていました。また三万年位前の人類最古の壁画といわれる類にも、必ずといってよい位、人類は武器を右手に持って描かれています。思考、言語を伴う右手の使用が、左脳の言語野を育んできたという考え方が現在主流です。
確かに世界中の文字は右手で書くように作られています。しかし、左利きの才人といわれる人は少なくありません。例えば、アレキサンダー大王、ナポレオン、エジソン、アインシュタイン、チャップリン、クリントン前米大統領、ビル・ゲイツ::等、挙げればきりがない程ですが、しかし、右利きの才人が左利きの才人に比べて少ないというわけではなく、利き手と才能の関連性はいまだ見つけられていません。
日本人の場合、成人の約九五%が右利きで、その九八%以上が左半球の脳に言語の中心があります。残りの二%は右半球にある場合と、左右両方にある場合があります。一方、左利きの人は、その約七〇%が右利きの人と同じように、左半球に言語機能の中心があるけれども、約一五%の人は右半球の脳に言語の中心が、さらに残りの約一五%の人は、左右両方に言語機能を受け持つ部分があります。
左利きを右利きに矯正しようとすると、しばしば吃音(どもり)が起こるのは、この言語野と手指を動かすことを命令する脳の部分が一致しなくなることから起こるものです。一般的に吃音の状態になっても九〜一〇ヶ月後には右利きに収まる子供が多いようです。しかし今迄も述べてきたように、もともと言語野が右にある子供は、わざわざ右利きに直す必要があるかという問題が生じてきます。
左利きを右利きに直すべきかという問いに対しては、一人一人の脳の「クセ」が関わってくるため、一概にはお答えすることは出来ません。無責任なようで申し訳ありませんが、このような研究成果があるということを知っておくだけでも無駄なことではないと思います。