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書家の仕事(16/08) [2004]

キーボード入力ではなく、なぜ手書きなのか……といった書道の教育における価値についての研究は、それこそ急迫の度をもって進められています。私も、その一端を担うべく、不退転の決意で本件に従事しているつもりです。
 そんな私のもとにも「書家」としての仕事がしばしばまいこんできます。あて名書きや賞状、たれ幕といった、いわゆる筆耕的な仕事というよりも、創造性とか独創性といったオリジナリティーを求められる種類のものです。例えば、店の看板として使用するロゴや 番組の題字等がそうです。ドキュメンタリー番組などの題字はそれを制作しているディレクターなどから、その番組の内容をよく聞いた上で書くことになります。ある時は、就学前の子供が半紙に書いた作品を指しながら、こんな風に子供が書いたように拙く書いてくれ、などという依頼もあり、それなら、私が書かなくてもいいじゃないかと思いつつも、それらしく書いてみます。とはいえ、書家としての総合的な力量が要求されることも多く、墨、紙などの用材を吟味しながら、作品をイメージし、創作していきます。
 楽しくも苦しい生みの難しさをへて、完成した作品を衆目にさらすことは、いつになっても気恥ずかしく、評価の声一つ一つに敏感に反応してしまいます。しかし、等身大の自分と対峙出来る機会に恵まれることはありがたいことで、次への糧とすることに仕事の喜びを感じているこのごろです。