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明朝体活字の美しさ(16/10) [2004]

この文章は、「明朝体」の活字で書かれています。(※ブログの場合異なる事があります)「実り」の表題もこれを大きくしたものです。縦画が太く横画が細くて、ふところの空きがなるべく均等になっている書体です。漢字の活字体のもう一つの代表的なものは「ゴチック体」です。このコラムの文字「巻頭言」も丸ゴチック体で書かれており、縦画と横画の太さがほぼ均等になっているのが特徴です。看板等インパクトを求める際によく使われます。
 明朝体活字は、新聞、雑誌、小説といった多量の文章を読ませる際に多く使用され、その使用頻度の高さから活字の王様とまで言われる程です。なぜこの書体が人気が高いのかについては理由があります。まず、人間の視覚には、縦画は認識しやすく、横画は認識しづらいという特性があるからです。例えば、バスケットボールの審判は、横方向へのファールはとり易いが縦方向へのファールはとりづらいそうです。また子猫に縦縞だけを見せて育てると、成長しても横縞が認識できなくなってしまうということが起こります。つまり視覚情報として目から横縞が入って脳まで伝わっていっても、脳がそれを横縞としてとらえることができなくなるのです。人間も脳の中で無意識に縦画と横画を区別して処理しているというわけです。
 縦画より横画を認識しやすいのは、目が水平方向に並んでいるからとか、人間が垂直より水平方向によく移動するからとかいろいろ考えられますが、こうした認知科学的な考察が、書体の美しさとは何かということに切り込み始めています。
 また、この明朝体活字は筆文字から作られた書体でもあります。例えば横画の最後の「鱗」と呼ばれる三角形の部分は、書道でいう「 収筆」とそっくりです。その他、ハネ、払い、点、等も筆のタッチそのものです。明朝体活字と筆文字の大きな違いは、活字は読み易さを優先させる為に抑揚、連続性、奥行き、動き等の要素を排しています。活字のよさ、手書きのよさについてそれぞれをよく知り、そして手で書くことの意味を再確認し、さらに練習に励んで下さい。