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一年を振り返って(2007年12月号) [2007]

 今年程、一年が速いスピードで過ぎていった年はないのではないかと思われるほど、
瞬く間に駆け抜けた「亥」の年でした。世間の書に対する関心が高まる中で、私も公
の場で、「書」に関して発言する機会が増えてきたようです。
 講演やシンポジウムなどではいつまでたっても冷や汗かいてますが、楽しみにして
いるのが、何かしらいつもおみやげがいただけることです。何も万頭やせんべいといっ
た手土産ではなく、来場者との場内外でのやりとりから、私がともすれば関心のない
ような分野からの指摘があり、貴重な経験をさせていただいています。先日出席した
「芸術と人間」という題目の講座では、会場からのパソコン上での手書きと筆書きと
はどう違うのだ、という質問に対して、筆を使いこなす手の感覚の精緻な能力につい
て説明したところ、後にピアノの先生がやってきて、ピアノも強弱だけではなく、実
に様々な鍵盤のコントロール方法があるのだと聞き大変勉強になりました。また美術
家の方は、なぜ黒板には白墨で、紙は白に黒色の墨なのだといったような、夜明けま
で討論の出来そうな話題を投げかけてきます。
 特に今年は「脳と書道」について研究をしている私自身が、初めて文字を書いてい
る時の自分の脳波を測り、ご覧になった方もいらっしゃるかも知れませんが、そのよ
うすがテレビで放送されました。この番組のテーマは、字が上手な人と下手な人とで
は脳の動きはどう違うかというもので、とりわけ先程述べたような手の感覚の違いに
大きな差が出たのが収穫でした。
 こうしてこの一年を振り返ってみますと実に様々な有意義な経験をさせていただき
ました。ただ、どうしても、もう少し落ち着いて腰を据えてきっちりと自分の勉強を
したいという不完全燃焼さが、どうも一年を流してしまった原因ではないかと反省し
ています。もう少し時間にゆとりがあれば、と思いつつ「時間があれば勉強が出来る
という人間は、時間があってもしない」という手厳しい言葉を胸に刻みつつ、来年は
地に足をしっかりつけ、「子(ね)」の如くこまめに学習の成果を挙げていきたく思ってい
ます。