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東京書芸展に参加しよう!(2008年4月号) [2008]

 東京書芸展が今年の九月二十六日(金)から三十日(火)までの五日間、東京芸術
劇場で開かれます。書の展覧会というと、一年に一回というのが一般的ですが、書を
より身近に事柄と結びつけて学び、書の根本的な力量の涵養に努めるという協会の理
念のもと、展覧会向けの作品製作のためだけに稽古の多くの時間を割かれることのな
いよう四年に一度の開催ということになっています。
 展覧会を目指した活動は、その労力の大きさだけ「書」に関する様々な知識と技量
を出品者に与えてくれます。題材を選ぶこと一つに関しても出来上がりを頭の中に描
きながら、文字数、漢字・仮名の割合等を吟味していかなくてはなりません。そして
書体。楷・行・草・篆・隷など、どの書体に取り組むか、また変体仮名入りにするか
どうか考えます。落款(落成款識のこと。作品に対する署名捺印)も大切です。名前
だけ入れるか、日付も入れるか、作者名、題名はどうするか、その他の説明文も作品
の中に挿入してみるかによって作品の雰囲気がぐっと変わってきます。落款印は必ず
しも使わなくてはならないものではありませんが、作品に趣きを添えるものとして、
小さいながらも大きな力を発揮してくれます。紙や墨にこだわってみるのもよいでしょ
う。同じ調子で書いたにせよ、墨や紙が違ってくれば、出来上がりはまったく別物の
ようにさえなるものです。このあたりも思案のしどころとなります。最後に表装です。
書き上げた作品が中身だとしたら、表装は着物のようなもの。中身に潜む持ち味を引
き立て、書を演出してくれる妙が表装の役割です。
 以上、ざっと思い起こしてもこれだけの要素が作品製作にからんできます。上級者
はこれらすべての要素のバランスをとりながらより高い完成度の作品を目指していく
ことでしょう。初心者は、指導者とよく相談しながら、少しずつ積み上げるがごとく
作品を練り上げていってください。展覧会出品に向けた勉励は、それが自らが額に汗
した分、悩めば悩む程、書の実力を高め、その製作過程が強く記憶に残るものです。
四年に一度の東京書芸展という晴れの舞台です。会員共通の素晴らしい思い出になる
ような展覧会となるよう、力を合わせて取り組んでいきましょう。