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「実り」四〇〇号を迎えこれからを展望する(2011年5月号) [2011]

 このたびの東日本大震災において、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますと共に、被災された皆様、そのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。該当地域の会員の皆様には心安らかに筆を執るひとときが一日も早く回復されますよう祈念しております。
 表題にもありますように「実り」が四〇〇号を迎えました。教育や芸術に関する叢書の休刊や廃刊の多い世相を鑒みるに、一月も休まず発行し続けられましたこと、会員の皆様に厚く御礼申し上げます。
 一口に四〇〇号と言っても、それはそれこそ毎日、毎月、毎年の繰り返し、積み重ねであり、まさに一歩一歩の歩みだったと思います。前進こそ、継続の力とばかりに、新しいことへ挑戦する心を忘れずに、また改善すべきは省みて糺し、書に関する研究と事業の推進をなしてきました。この五〇ページ程の薄い体裁の「実り」には、このような厚い歴史の層が積み重ねられています。
 この四〇〇号を振り返り記述をすれば際限のない程の分量になることでしょう。今は五年、十年先を見据えて行動しなくてはならない時かと思います。科学技術が人々の生活を豊かにしている一方で、人間の智恵を凌駕するような事象も起こり続けています。新しい薬のおかげで一つ不治の病が撲滅されたとしても、さらに新しい病気が人を苦しめ、また万全の備えをしていても、それを越える災害が絶対に起こりえないとは言いきれません。どんなに科学が進歩しても、おもいやりといった心の豊かさがそれと比例して進歩するわけではなく、便利さや豊かさとどうつき合っていくかについて考えていかなくてはならない時代が眼前に到来しています。
 本会と、この「実り」が、今後世の人の役に立てるような存在であり続けるためにも、この「手で文字を書く」という所業が、人の心にとってどのような作用を促すのかについて深く掘り下げていかなくてはならないと思っています。会員の皆様と共に輝く未来を目指し、五〇〇号、六〇〇号と歩んでいくことを楽しみにしています。