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東京書芸展に向けて(2012年3月号) [2012]

 四年に一度の展覧会、東京書芸展が来年の一月二十二日(火)~二十七日(日)の六日間にわたり開催されることに決まりました。会場は前回と同様東京池袋の東京芸術劇場です。現在は改装の為閉鎖されていますが、此度の展覧会はリニューアルオープン間もない芸術劇場の会場を利用出来るということで、いつもにも増して清新な気分で取り組めることでしょう。
 今回は開催時期が新春ということで、寒さ厳しくも、まだ正月の賑いの醒めやらぬ頃となります。この季節に合わせて作品を制作するのもよいかもしれません。また前回の展覧会の時にはなかったかなの部門に本格的に挑戦してみるという手もあります。いずれにせよ一年先の展覧会を目指して、それに向けて構想を練り、今から少しずつ前進していくとよいでしょう。展覧会に向けた稽古は、出来上がった作品が多くの人に目に触れるという緊張感があるだけ真剣味を帯びざるを得ません。また展覧会という一種独特の高揚した雰囲気の中での非日常の体験は強く残るものです。ぜひこの機会を生かして下さい。
 そういう私はどうかと言えば、作品制作について正直のところまだまったくの白紙の状態です。中国に出かけて見つけた珍しい太い筆を使って思いっきり大きな文字を書いてみようとか、かなちらし書きの新しい布置のものを開拓してみようかとか、色々と考えは浮かぶのですが、これがいざ書いてみると様にならなかったりするから困ります。展覧会に向けて一つの作品を作り上げることは容易ではなく、また楽しいだけの作業でもありません。ただし、山を登るが如く汗し、生みの苦しみをしっかりと味わえば、その先には今まで見えなかった境地が必ず出現してきます。
 彫刻家、高村光太郎の言葉に次のような一節があります。「書を究めるという事は造形意識を養うことであり、この世の造形美に眼を開くことである。書が真に分かれば、絵画も彫刻も建築も分かる筈であり、文章の構成・生活の機構にもおのずから通じて来ねばならない。…」 書をするということはこの言葉を引用するまでもなく日本文化の根底に通ずるものです。展覧会への挑戦は労す以上に大きな実りをあなたにもたらしてくれることでしょう。