SSブログ

書を能(よ)くするということ(2013年10月号) [2013]

 あまりに暑い夏も過ぎ、今年も年間賞の発表の季節となりました。実りの秋の到来です。この一年、優秀な成績を収めた方、熱心に学習を続けた会員の方に対し、本会ではその功績を讃え表彰を行なっています。その学習姿勢を窺うところ、職場で重責を負いながら、休むことなく稽古に出席を続けられている方。高齢でありながら、後輩の面倒見よく教室の皆から親われつつ、自らも積極的に新しい部門に挑戦している方。それぞれが信念を貫くような確かな書との向き合い方をされており嬉しく感じています。
 “書(しょ)を能(よ)くする”とか“能書家(のうしょか)”という言葉があります。これには文字を上手に書く(人)、という意味合いがありますが、それだけではないと私は思います。整っていて流れるような書きぶりでありながら、どこか大切なものが欠けていれば能書とはなりません。手で文字を書くということは、脳の様々な領域の機能を同時に活動させうる行為です。それだけに、学習姿勢そのものまでが、その書に投影されてしまいます。書はまさに心画なのです。
 書を学ぶ成果とは、と訊(き)かれれば、字が上手になることが第一義になるかもしれません。ただし書を能くするということを考えれば、書との向き合う姿勢の方が、むしろ大切なのではないかと思います。
 今回受賞された方々は、様々な困難を克服しながら、書という坂道を着実に上(のぼ)っています。ぜひ、この姿勢を忘れず、これからも書と向き合う時間をより楽しく有意に過ごされますことを祈念しています。



この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。