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心の時代に書が出来ること(2014年10月号) [2014]

 天候不順のおかげで、せっかくの夏休みが雨にたたられたという方も多かったかもしれません。それでも暑さは例年通り耐え難い程で、秋風の訪れに、少しほっとしているこのごろです。
 今夏、三日間にわたる指導者講習会には、学校において書写書道の指導にあたる教員の方々も少なからず参加されました。皆さん習字をどう指導すればよいのか大変迷っているようでしたが、共通する点に、習字の授業に真剣に取組むと、教室の雰囲気がスーと落ちついてくる、という感覚を持っていました。理論的にどうこうというよりも長年の指導経験の中で、実感しているのです。
 文字を手で書くということは、脳の前部、それも心臓から遠い部分を大きく賦活させる行為です。手の細かい作業をすると、ボケにくいといわれるのはそのためです。書の指導は、もっと脳の機能と構造、それから言語の特質について理解を深めながら行うべきだとの思いを改めて強くしました。
 また、文字を手で書くということは、筋肉トレーニングのように厳しいものです。パソコンやスマホといった現代の文明の力を使えば、このような苦労はせずとも「書く」ことが出来るのですが、手で「書く」のと文字を打って「書く」のとでは脳の動きに大きな差異があります。
 今月号は、年間表彰者の発表の月です。時代や世情に流されることなく自らを律し、脳と心の健康の維持に努められている姿勢に対し、心より敬意を表したく思います。人の心に起因する悲しい出来事の多い昨今です。会員の皆様が賢明さを以て、ぜひ書を通し、これからも脳と心の健康の大切さを、広めていただきたく、これをお祝いの言葉とかえさせていただきます。