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半紙は折り目をつけて書いてもよいか(2016年7月号) [2016]

 表題の言葉は、よくある質問です。折り目をつければ、配字、字粒が捉え易くなりますが、いつまでも折り目に頼っていては上達しません。ペン習字部や実用毛筆部では、まずマス目に一文字一文字を書く練習から始まり、次に罫線入り、最後には無地と徐々に補助線がなくなっていきます。これと同じように、半紙も一文字を枠にはめることから、全体を俯瞰して部分を組立てていけるよう練習を進めていかなくてはなりません。
 文字にはそれぞれ特徴があります。たて長の文字、平たい文字、小さな文字、大きな文字など様々です。「一」や「四」などの文字は平たくなるので、上下を狭めにとりますし、「永」や「年」の文字はたて長に書くので広めにとります。これらをすべて同じ大きさの枠にはめ込んだら、平たい文字の上下はあき過ぎとなり、たて長の文字の上下は窮屈になってしまいます。半紙に体裁よく書くためには、こうした配字の微調整が必要になってくるのです。
 折り目をつけず、作品の完成予想図を頭に描いてから、まるで彫刻を掘り出すがごとく一点一画、一文字一文字を書いていくことは、初めは難しいものです。これも数をこなし、訓練を重ねることによって、次第に出来るようになるのが書の醍醐味です。目に見えて自らの向上が感じられる達成感を味わえる点は、体育のそれと似ています。半紙に収めることがそう難しくなくなると、今度はより広い空間を支配することも射程圏内に入ってきます。例えばこの「実り」前月号一ページの条幅作品は仮罫を引いたり、折ってから書いたものではありません。
 子供の習字をしているようすを見ていると、自分の名前を紙の隅に小さく書いたり、また思いきりはみ出して書いているのを見かけます。私の指導経験からなのですが、これが紙にきちんと収まるようになると、その子供の他の感覚、例えば集中力、判断力なども成長してきます。獲得した能力は、もちろん手入れをしないといけませんし、またより高度なものに挑戦していかなければ錆ついてしまう類のものです。ぜひ、少しずつ難度の高いものに挑戦していってみて下さい。