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東京書藝展閉幕す(2016年11月号) [2016]

東京池袋の東京芸術劇場で行われた四年に一度の書展、東京書藝展が閉幕しました。一年の準備期間、作品制作の構想、稽古等も含めれば、それ以上の期間が本書展に向けて費やされたはずです。出品者の方々、指導を担当した先生方、運営にあたった事務局職員の方々、それぞれの熱意ある取り組みが結実し、素晴らしい展覧会となりましたこと喜びにたえません。特に、実行委員長の内田篤秋先生を始め審査役員の先生方には、本展成功に多大なご尽力を賜りました。また実際の運営に関しましては、多勢の会員の方々、関係各位にご尽力いただきましたこと、この場を拝借し改めて厚く御礼申し上げます。
 会期中は、私も出品作品をじっくり鑑賞させていただきました。会期が終りの頃には、誰の作品がどこに展示されているのかが頭に入っているようにまでなり、私にとっても充実した書展となりました。会場では、それこそ数十年ぶりの再会を得るなど、展覧会ならではの慶ばしい場面も多く、こうした機会を提供する事も、本展の一つの役割かと思いました。
 書をすることは、文字を上手に書いたり、表現力豊かに書くことだけを最終目標としているのではありません。よく考えて文字を書きしたためることは脳の様々な領域の同時並行的な活動を促し、結果、言語能力を高め、思考、判断、コミュニケーション能力といった人間らしい高等感情を培っていくことにこそあります。つきつめれば、それが再び書となって現れてくるのですから、巧拙のみを基準としない奥深い書の世界がそこにあるわけです。
 東京書藝展が、なごやかな雰囲気の中、来場者どうしの交流もあり、実り豊かな展覧会となりましたことご報告申し上げます。これからもぜひ書のある暮らしを楽しんで下さい。