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一年をふり返っての雑感(2020年12月号) [2020]

 早いもので今年も師走の頃となります。一年をふり返ると世界中が新型コロナにふりまわされたといえるでしょう。本会も四年に一度の展覧会が延期となり、毎年秋に行う表彰式も中止となりました。残念なことですが、来年以降、出来る限り開催に向けての道筋を模索していくつもりです。
 年賀状の準備はいかがですか。来年の年賀状は社会全体が自粛を強いられる中、「おめでとう」や「賀」「祝」「慶」などの言葉を避けて、新年の挨拶を述べるに止とどめるという方もいらっしゃるようです。これも一つの姿勢ですが、明るい新年を迎えたいとの期待を込めて例年どおりの賀状を差し出すことも良いことかと思います。人と人との密な交流がなされにくい昨今だからこそ、″心画″といわれる自筆で表裏共にしたためて、ぜひ互いの表情を伝え合って下さい。
 ヨーロッパでは、感染が再び拡大し、不要不急の外出を制限するなどの措置をとる国も少なくないようです。それでも大学を除く教育機関は感染に注意しつつ開いたままにしているところが多く、教育を停止させることへの強い危機意識が窺れます。大学生ともなれば自らの力でリモートでも学び続けることが出来るでしょうが、年齢が下がれば下がる程、人対人の実体験を通した学びが必要にならざるをえません。今、有効なワクチンや治療薬の実用化が待ち望まれています。人類は疫病とその叡智を以て闘ってきました。他の地球上の動物と異なり、人には教育を受け、学習をし判断をしそして創造していく能力が備わっています。
 H・G・ウェルズ(一八六六~一九四六)のSF「宇宙戦争」は、火星人襲来によってパニックに陥る人類を描いています。その結末は地球の感染症によって火星人が滅ぶというものです。このSFの示唆するところは危機における人間の描写のみならず、その地にあらざるものの弱さや、自らの地を大切にすることでもあるように私は感じています。人間がこの地球とよりよく調和していくために、教育はこれからますますその重要性を増していくことでしょう。