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ペン先と筆の手入れと換えどき(2021年9月号) [2021]

 えんぴつなら削り切って短くなるまで、シャープペンシルなら芯がなくなるまで、ボールペンやサインペンなどならインクがなくなるまでと、その換えどきは明らかです。「つけペン」は極めてアナログな筆記用具で、ペン軸はそのままで、ペン先が自由に交換出来ます。つけペンを使用している方からは、よくどの位で交換したらよいかと訊かれます。一般に多く使われているクローム製のペン先なら、私の感覚では、一日二時間、週三日使うとすれば、半年位は持つものです。これ以上使い続けると、ペン先が丸くなってきて、線が太くなってしまいます。線を太く描きたいのなら、この使いこんだペン先を用いるのもよいでしょう。先が丸くなっても時には太い線で書く場面もあり、私はペン先を換えることはあっても捨てることはしません。
 また、つけペンのペン先もインクの出が悪くなることがあります。これはインクの通り道である先の割れ目にインクが固まって目詰まりを起こしていることによります。こうした時は、ペン先を少し押し広げて、スポンジ等で水洗いすると解消できます。
 筆の換えどきもペン先と同様です。どんなに丁寧に書いても筆先が鋭く描けなくなる程、毛先の磨滅が進んだ頃です。筆の太さ、毛の質によっても差がありますが、これもペン先と同じ位の使用時間が換え頃の目安です。ただし筆の手入れはペン先より格段に面倒で難しいものです。筆を使い終わったら早めに洗うことが大切です。筆の根本の部分に墨がたまって固まらないように墨を押し出すようにして洗います。根本に墨が固まってしまうと、筆の腰の弾力が使えなくなり、運筆の際、筆本来の抑揚が上手く表現出来なくなるからです。
 ペン先同様、筆も捨てたりしたことはありません。時にこうした筆の出番が巡ってくる時もありますし、何より自分を育ててくれた道具ですので大切に保存しています。
 便利な筆記具の溢れる時代ですが、こうした手間のかかる道具と向き合うことも、書に通じる道の一つかと思います。

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