SSブログ

文字を書く楽しみ(2021年10月号) [2021]

 日本の文字のタイピングが一般化しておよそ二十年が経ちました。わざわざ手書きしなくてもタイピングすれば、読み易い文字が出来上がるのだから「手書きの存在意義とは」と様々な人が色々な視点から考えてきたかと思います。脳科学の分野では、今迄、手書きとタイピングの脳のメカニズムの違いについて、実はよくわかっていませんでした。理由は、日常普通に日本語をタイピングする人口が二十年以上前は、そう多くなかったからです。医学という治療の分野の研究では、こうした人達の中から文字が書けなくなる失書症という状態を抽出してデータを集めるといった手法で行われます。このような研究からは手書きとタイピング書字とは別の脳内メカニズムによってなされていることが明らかになってきています。脳の活動は外からは見えませんし、またそれ自身に知覚や痛覚といった感覚がありません。脳がどのように働いているか自覚することは出来ませんが、この手書きとタイピングの脳のメカニズムの違いについて、何となく納得する方も多いのではないでしょうか。
 今月号では、年間賞が発表されています。受賞された方々の学習姿勢を伺うと、遠いところから休まず通ってきていたり、毎回黙々と課題に取り組む、兄弟仲良く学ぶ、コツコツ努力する、年下や後輩の面倒見よく、やさしく礼儀正しく接する等、教育が目指すべき姿勢を皆さんよく実践されています。
 書をすることは、人間だけが持っている豊かな情緒を育むことにつながると私は考えています。医科学の分野での研究は、こうした関連に示唆を与えるところです。文字を書く楽しみは、目に見えず至って地味なものですが、じわじわと、そして確実に深い楽しみとなって実りゆくことでしょう。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。