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情報を読み解くには(2015年1月号) [2015]

 あけましておめでとうございます。平成二十七年が清々しい空気の中、幕を開けました。昨年中は、先生方、会員の皆様のご協力のもと、滞りなく多くの行事を終えられましたこと、厚く御礼申し上げます。最近は、特に小学生、中学生の会員の増加が著しく、手で文字を美しく書くことの大切さが見直されてきているようです。我が国の将来を荷う若芽たちの確かな学力と、健全な心が養われるよう、本会もその指導をさらに充実させていかなくてはと考えています。
 日本語は、手書きすると、世界でも最も難度の高い部類の言語になりますが、機械を使って書くと「音」を入力するだけで書けてしまうので、逆に世界で最も簡単な部類の言語となります。この資源の乏しい日本が、世界でも際立った文化と経済力を維持してきた原動力は、日本の文字を手書きするという、高度な脳の訓練によるものであると私は確信しています。
 パソコン、スマホ、インターネットの出現で「情報」のあり様は激変しています。これは日本だけではなく、世界的な現象です。これだけ情報が溢れ、多くの「知」が居ながらにして手に入る現代、知らない方がよいことを知ってしまったり、逆に知らなくてはならないことを、知らないでいるのではないか、という疑念に駆られることがあります。
 例えば、米国では、病院の小児科の待合室にテレビがないことをご存知ですか。これは一九九九年に米国の小児科学会がガイドラインとして、この年齢の子供にテレビ視聴をさせると、言葉の遅れがでるのでやめましょう、ということから始まったものです。これが日本に来ると「度の過ぎた視聴は別にして、まだあまりにもこの問題は、科学的に明確にされていない」という解釈に変化します。科学的根拠というのなら、脳がまだ未熟な幼児にとって、赤、青を中心とした光刺激は、後頭葉を大きく賦活させ、結果、言葉を司る前頭前野の活動を低下させるのであろう、といったところでしょう。
 私が憂慮しているのは、このテレビ視聴の良し悪しというよりも、これらの経緯自体を知っている人が、どれだけ日本に居るのか、ということです。新聞を読んでいても、畑が少し違えば、記者でさえ、これらのことを知らないまま記事を書いています。
 情報を読み解く力は、メディアリテラシーといって、多くの情報を的確に処理、判断する能力を指し、現在、その技術を身につけようという学問の分野さえ出現しています。情報を読み解く力は、もちろん脳にあることは間違いなく、まず健全な脳を育むことが、こうした能力を育む上で大切なはずです。習字をするということは、注意や判断といった脳の前頭前野の活動を促す学習に他なりません。この実り豊かな道のりを、今年も皆様と共に、一歩一歩確実に歩んでいきたく思います。