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書の品格(2009年1月号) [2009]

 平成二十一年の幕が明けました。昨年は四年に一度の展覧会も開催することが出来、
また明治記念館で行なわれた表彰式にも大勢の方にご参加いただきました。会員の皆
様には協会の運営に様々なご協力を賜りましたこと御礼申し上げます。
 今年は特別な行事も予定されておらず、会員の指導や組織の充実に力を注ぐよいチャ
ンスの年かと思っています。そこで、はっきりとしているようで曖昧でもある「書を
学ぶ」ということについて、まずはきちんと整理だてをしていかなくてはならないと
考えています。
 美しい文字を書きたい、というところから始まって、ある程度、所期の目的が達せ
られそうになると、多くの人が、どんな「書」を目指して勉強を続けていけばよいの
か迷い始めます。文字の美しさを好き嫌いで決めるのか、おもしろいとかそうでない
とかで決めるのか悩み、学習の方向性を見失うことがあります。
 「品格」という言葉がもてはやされて久しいこのごろですが、私は、そんな学習の
指針を見失いかけている人には、「品格のある書」を目指すように助言しています。
文字を美しく書こうとすれば点画の長短、太い細い、連続と非連続……等々様々な表
現のバランスをとっていかなくてはなりません。例えば長短のメリハリだけが他の表
現より突出して目立っているとしたら、好き嫌いは別として、いわゆるクセ字になっ
ていまいます。品格の高い文字は色々な表現が微妙なバランスをとって均衡している
ものです。上級者ともなれば、潤滑、筆順、起筆の変化、線の曲直、文字の傾きや左
右へのはり出しなど、加えることの出来る要素は無限です。学習を進める際には、表
現の要素を増やしていくことと、そのバランスをとることを大切にして下さい。一点
豪華主義の書を目指すことは、書作品のおもしろさを追求する時にはお勧めしますが、
平素日頃の学習法ではありません。指導する側は学習者のこうした到達点をよく把握
しながらな的確なアドバイスをしていかなくてはなりませんし、学習する側も、次に
学ぶべきことが自分が苦手なところであろうと、それを乗り越えていく覚悟が必要で
す。 皆様が書の道を確かな足どりで歩まれそこから大きな収穫を得られますことを
祈念し、年頭のあいさつとさせていただきます。