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個展を了えて(2011年8月号) [2011]

六日間に亘って開催した私の個展も去る七月三日に無事終了することが出来ました。三年の準備期間を振り返り、また大勢の方にご覧いただき、今は安堵の気持で一杯です。
 初めての個展ということで、作品制作はそれこそ無からの出発でした。この「実り」の課題にあるように、楷、行、草、篆、隷、ペン字、古典かな臨書、古典漢字臨書と、学書のほぼすべての分野に取り組み、作品化してみたことに気付かれた会員の方も多いと思います。今習っている教材の延長線上に、美しく表装を施された書作品があるのだということが分かれば日頃の稽古にもさらに熱が入ることでしょう。
 個展の会期中は、ご来場になった方々と書について語る機会を得られたことが何より嬉しく、今回の個展の大きな収穫となりました。使用する筆やその扱い方から制作の期間や執筆法、はたまた題材の選び方まで様々なやりとりをする中で、皆様が書に対する認識を深めていかれたこと、そして同時に私自身が作品制作の過程をしっかりと再確認することが出来ました。小さなお子さんも声に出して作品を読み、ご家族の方々と共に書の空間を楽しまれていかれたこと、何よりであったかと思います。
 長い間個展を目標に過ごしていたため、今はやや緊張の糸が伸びぎみのようで、そろそろエンジンをかけなければと考えています。読もうとしてそのままにしてある厚い書物の類いに手をつけたり、仕事場の模様がえしたり、脳と書道の研究を進めたいと思っています。私にとってはこの個展が書家人生のよい節目となったようで、これからは新しいスタートを切るつもりで元気よく邁進していくつもりです。
 書作品を通して何らかを表現するということは気恥ずかしくも大きな労力と創造性を要する修業かと思います。それだけにそれをやり遂げた後、自分に何か力強いもの残る感覚が貴重です。来年は予定どおりに運べば四年に一度の東京書芸展が開かれます。今から創作の構想を練り始めても決して早すぎることはありません。今度は皆様の作品を拝見出来ますこと楽しみにしています。