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新春の東京書藝展開催に寄せて(2013年1月号) [2013]

 四年に一度の東京書藝展が一月二十二日(火)~二十七日(日)の間、東京芸術劇場で開催されます。これまでは秋の開催でしたが今回は新春の展覧会ということでポスターの色にもその季節の雰囲気が表現されています。
 出品される方々には、作品の完成迄それこそ一言では言い表せない程のご苦労があったかと思います。好きな言葉を作品にしたり、新しい書式に挑戦したり、今迄に書いたことないような大きなサイズの紙に書いてみたりと、四年に一度ということで書藝展を機に一歩前進しようという姿勢が感じられました。頼もしい限りです。
 「実り」に自分の作品が掲載されたりすると、実物より縮小され、また他の作品と並ぶので、よく自分の書きぶりの特徴が分かるものです。そこからまた学び次の学習につなげていくことは日頃の稽古では欠かせないステップです。展覧会場においても同じく、多種多様な作品の中において、自分の作品の完成度を確認することもよい勉強です。この時自分の作品が最高と慢心する必要もなく、また最低だと卑下することもありません。他者から学ぶことはどんな上級者にもあります。いや上級者であればある程逆に他から学ぶことは多くなってくるものです。私も自分の作品が展示されるのは、まるで自分の分身がさらけ出されているようで、いつになっても気恥ずかしいものです。そこで出来ることなら自分の作品を、例えば他の人が書いたものとして第三者になって鑑賞してみたらいかがでしょう。また反対に他の人の作品を自分が書いたものと擬制して向き合うのもよいかもしれません。自分の作品がどう評価されるかのみを考えて会場に足を運ぶのでなく自分の作品と少し距離をとり、展覧会場という場にこのように身をゆだねると、それは自他との雄弁な対話の貴重な機会へと変質するものです。
 今回の東京書藝展には会員の中から四百人以上の方がその力作を出品しています。「書は人なり」というようにその作品一つ一つに真似ることの出来ない個性を込められています。表情のない活字での言葉のやりとりの増える現代ですが、本展が一人一人の豊かな個性に対して、それぞれが尊重しあえることの大切さを確認できる、そんな展覧会になればと期待しています。