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学びの好循環を期して(2017年10月号) [2017]

爽涼の秋、書をするに好適な季節が到来しました。年間賞を受賞された方々には、心よりお祝いを申し上げます。
 書を学ぶということは、学問を探求するのと同じく深遠なものです。獲得したと思ったらまた次の課題が出現し、きりがありません。文字を美しく書きたいと思って、そのコツを学び稽古を重ねたとしても、その先の表現には無限の可能性が横たわっています。きりがないのなら、努力しても無駄ということではありません。学ぶ過程では、集中力が高くなったり、物事を自分の頭で深く考える習慣が身についたりするものです。
 永年書をしていると、それが色々な学びに関係していることに気づきます。「書だけ分かって他のものは分からないというのは分かりかたが浅いに外なるまい。書がその人の人となりを語るということも、その人の人としての分かりかたが書に反映するからであろう」と述べたのは、書をしてそれを最後の芸術といわしめた、彫刻家の高村光太郎です。
 文字を美しく書こうとすることは、脳を広範囲にわたり並列的に活動させるだけに、相応の意志と粘り強い努力が必要になってきます。書と向き合うこと、手で文字を書くことは、多忙の現代社会だからこそ、かえって意図的に、積極的にその時間を造り出すべき活動であるはずです。
 手で文字を書く時間を大切にしている方々がこの度受賞をされたことと思います。皆様の真摯な姿勢に敬意を表しますと共に、その学びがさらに大きく広がっていくことを祈念しております。