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受賞を祝して(2020年10月号) [2020]

 今年は暑さにコロナ禍までもが加わり、今迄に経験したことのない忍び難い夏となりました。それでも自宅に居る時間が増えた分、それを習書にあてるなどしている方も多いようで、そのような会員の方々の書に対する姿勢には畏敬の念を抱かずにはいられません。
 仕事や講義がリモートになることが当たり前になる一方で、最近では、これに物足りなさを感じている人のお話もよく聞くようになりました。リモートだとスイッチを切ったとたんに一人になってしまう、とか実際に会って話すからこそ、その場の情景や環境といった共有する風物の中でのやりとりの中で新しい発見や創造が生ずるのだ、などといった意見です。
 失って初めてその有難さが分かるといいますが、パソコンで打ち出された文字が溢れる現代において、手書きのよさも見直されていると思います。前述のリモートにはない情報量の多さ、手書きの文字には例えばその筆跡や配字、それこそ紙質などといった表現までが文字記号と共に豊かな情報としてやりとりされます。
 とりわけ手書きは話すのと比べると、手の細かい動きや空間の構築性、文字性などといった要素が加わるため、それを自らの確かなものとするには、長期にわたる持続的な修錬が必要となってきます。まさに「手習いは坂に車を押すが如し」です。
 本号では年間賞が発表されています。このような災禍の渦中にあっての受賞です。その輝きはかえって増すものかと思います。受賞された方々のたゆまぬご精進に深く敬意を表しますとともに、心よりお祝いを申し上げたく存じます。