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六年ぶりの東京書藝展(2022年6月号) [2022]

 四年に一度の東京書藝展が、令和五年四月五日(水)~九日(日)の五日間、池袋の東京芸術劇場で開催されます。本来なら令和二年の秋に行う予定でしたが、コロナ禍のため延期となっていました。
 本会が主催するこの東京書藝展が四年に一回の開催であるのには理由があります。展覧会書道盛んなりし昭和の中頃、実用に根ざした書を見直そうとしたのが本会の設立の理念の一つでもあります。この「実り」の″実”にもこの思いが託されています。展覧会の出品製作に追われ、本来書を通して涵養すべきことがらがおろそかにならぬよう、四年に一度という期間を置いての開催となったわけです。ただし、この間には、四年に一度の誌上展があります。つまり二年に一度、作品として発表する機会があるということです。
 書を学ぶは、まさに自己を厳しく律する修行そのものです。これによって育まれる人の能力については平素私が述べているとおりです。書の学びによって獲得された人の感覚は、再び書となって現れてきます。書の修行がこうした根の部分を養う作業だとしたら、展覧会の作品は、いわば地上に見える枝葉であり花です。作品を美しく着飾る表装、広々とした展覧会場は、まさに書のはれ舞台ともいえます。下を向いて黙々と手を動かす書の場面とは対照的に、展覧会は多くの人が行き交い作品を見上げる雅びな書の場面です。
 東京書藝展は本会の会員はどなたでも参加が出来ます。作品制作が初めての方もいらっしゃるでしょう。どのような流れで書を作品としていくかは今後、この実りの案内を参考にしたり、先生と相談をするとよいでしょう。月々の課題や試験に追われる中、展覧会に向けての作品制作は書を学ぶ上で一里塚として残ります。出品作品が多くの観覧者の目にふれることで、また自分の目線が上がっていくのも展覧会ならではの効用です。
 来年に行われる展覧会は、四年どころか六年ぶりとなります。コロナ禍で自宅にこもることを強いられただけ、書は自らの奥底により深く根を張ったと考えれば、来年の東京書藝展は今迄以上に充実したものとなることでしょう。会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。